こんにちは、JGGのkei(jpn)です。今回はわたしの趣味全開で『「レベルアップ」のゲームデザイン 実戦で使えるゲーム作りのテクニック』の書籍を紹介します。
著書は「ゴッド・オブ・ウォー」の製作者でもあるスコット・ロジャーズ。
書籍はこちら(ノンアフィリエイト)
ファーストインプレッション(素直な感想)
すげー!隅から隅まで「ゲームあるある」が網羅されてる!
例えば、「木箱多すぎ問題」。
木箱は便利過ぎるから、それに置き換わる50個のアイデアを出してる。
他にも「あるある」が盛りだくさん。
移動1つ取っても、「入力した分だけ素直に動く」のか「遅延がある」のか「すこし滑る」のかはたまた「崖はどこまで足が出て良いのか・・」などなど。この調整ひとつでゲーム体験がガラッと変わる。
これらはすべて「こうした方が面白くなる!」と考え、検討し、取り入れたのだと思うと、ゲームデザイナーは考えること多すぎて頭爆発しそうだな!
そう考えると、近年の開発ソフトの「全部入りアセット」のなんと素晴らしいことか!RPGツクールにも「サンプルゲーム」っていうお手本ゲームが入ってたけど、あまりに王道で好きだったなぁ。
また著者は「もっとも有名なゲームデザイナー」として宮本茂(マリオの生みの親)の名前を挙げてる。なぜだろう、自分と関係ないのに誇らしい。やっぱり日本はゲーム大国なんだな〜。
本書は「家庭用アクションゲーム」がメイン
本書は、色んなゲームに応用ができる部分ももちろんあるんだけど、主眼はあくまで「家庭用テレビゲーム」しかも「アクションゲーム」だった。
ゴリゴリのアクションゲー「ゴッド・オブ・ウォー」を作った人が著書なのだから、そりゃそう、とも言える。
BCGは2023年現在まだまだ「ストラテジー」「ボードゲーム」「ターン制」みたいなものが多いから、参考になるかっていうと、どうなんでしょ?
次からは、書籍の中から美味しそうな情報をピックアップして、自分なりの解釈を加えます。
第1章「導入」
Q.ゲームとはなんですか?
著者はこう言います。
A.「ゲームとは少なくとも1人のプレイヤーがいて、ルールがあり、勝利条件があるもの」
こんなにある!ゲームに携わる人たち
プログラマー・・・部門によって数学、2D、3Dグラフィック、物理学、パーティクル、UI、AI、入出力装置、ネットワークの理解などが要求される。
アーティスト・・・コンセプト、絵コンテ、キャラクターモデル、マップモデル、テクスチャ、エフェクト、UI、モーション、テクニカル、ディレクターなど多岐にわたる。
デザイナー・・・レベルデザイナーは世界を構築するすべての要素を、ゲームシステムデザイナーはゲーム内経済やスキルツリーなどの相互作用を、スクリプターはコードの実装を、バトルデザイナーは戦闘バランスを、クリエイティブディレクターはこれらのまとめ役を担う。そしてデザイナーが背負うもっとも重い責務として「ゲームを面白くする責務」がある。
プロデューサー・・・チーム全体を監督する仕事。昔はデザイナーがプロデュースを兼任していたが、近年は独立した職務となった。雇用、チーム編成、ゲームデザインの関与、スケジュール管理、予算、バランス、渉外、テスター手配、ローカライズ、メディア露出、その他雑用など多岐にわたる。通常はゲームの顔となりやすい。サポート役のアソシエイトプロデューサーも存在する。
テスター・・・忍耐力、一貫性、優れたコミュニケーション能力が求められる。多くの新人の登竜門となりやすい。
作曲家・・・ゲーム上の制約を念頭に、世界観と状況に合った音楽を制作できる人が求められる。
サウンドデザイナー・・・SEを制作する。多くの音源をブレンドしたり、どこにもサンプルが存在しない、あいまいな要望を形にできる能力を求められる。
シナリオライター・・・シナリオライターは通常、(ゲームデザインより後の)ゲーム制作後半で雇われる。多くは非常勤のフリーランス。正しい文法、脚本の知識、ゲームに合わせた文章のチューニングが要求される。
パブリッシャー・・・資金提供、プロダクト管理、法的問題、ゲーム製造、物流、広報マーケティングを担当する職務の総称。詳しくは次のような職種に分類される。
プロダクトマネージャ・・・プロデューサーに似た内容で、スケジュール管理、優先事項の決定、開発と法務部の仲介、レーティング機関とのやり取りなどを担当する。
クリエイティブマネージャ・・・ゲームデザイナーや正社員シナリオライターが兼務することがあり、アイデアを考えたり、ピッチ・ドキュメントを書いたり、宣材を準備したり、コンセプトを決めたり、試作品をプレイして楽しさを確認する。客観性やフィードバックの正確さが求められる。
アートディレクター・・・クリエイティブマネージャと似ているが、アートに特化する。ゲームビジュアルのほか、プレイヤーにとって必要な情報を、目に見える形で起こす。パッケージや、開発に必要な素材を提供する。
テクニカルディレクター・・・チームが効率よく働けるよう、使用ツールやソフトウェアの検討、採用などを行う。臨機応変に技術サポートを行う。チームから出た案が現実的かどうかを精査する。豊富な開発実績とノウハウが求められる職種。
その他・・・「パブリッシャー」には次のような職種も含まれる。「事業開発」は、開発スタジオとの契約、関係構築、ピッチミーティング開催、ゲームの見込み評価を行う。「弁護士」は契約内容の精査や法的リスク検討を行う。「ブランドマネージャ」はマーケティングを行ったり、マニュアルやパッケージ作成にも携わる。「宣伝マネージャ」はゲーム雑誌に関わったりイベントを企画する。「QAマネージャ」はテスト部門を管理し、バグレポートを開発に送る。また「リクルータ」は適材適所の雇用を支援する。「レビュアー」はゲームプレイ記事を寄稿する。「ライセンサー」はブランドの適正利用を管理する。
多すぎダロぉぉ!?
第1章のまとめ
ゲームとは「プレイヤーと、ルールと、勝利条件が揃ったもの」!
ゲームの目標は、一言で言い表せられるくらいシンプルであるべき!
(例:戦艦ゲームなら「敵船を沈めろ」)
ゲームジャンルは多種多様なので、組み合わせまくってよし!
第2章へ続きます
第2章「アイデアの出し方」
アイデアは突拍子もなく、時にバカバカしいものが良いことがあります。
例:配管工のおっさんがキノコを食って強くなり、お姫様を助けるゲーム
アイデアのヒント
1.普段ならぜったい得ない知識を得る
盆栽、生物学、家具の組み立て説明書などなどなど。
ゲームを「どこかで見たことあるような模倣品」にしたくないなら、避けては通れない道。いまどきならWikipediaとか良いんじゃない!?
2.散歩、運転、トイレ、シャワー
これぞ「アイデア浮かぶ瞬間あるある」!!
3.セミナー、ディスカッションへの参加
アイデアノートをいっぱいに書いて帰りましょう。そして大抵そのアイデアはボロカスに言われます。
4.クソゲーを遊ぶ
クソゲーをプレイすれば、クソゲーたる所以が見えてくる。自分ならこのクソゲーをどう改善する?
5.努力は夢中に勝てない
「好き、夢中」になれるものを追求し続ける。「ポケモン」は「昆虫採取が好きすぎる田尻智氏」から生まれたアイデア。
アイデアはパクるな、盗め
例えば、こんな具合。
初代ドンキーコングはジャンプアクションと、敵を倒せるパワーアップアイテムを追加した。
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マリオブラザーズは上記に加えて、初期状態でも敵を倒せるようになった。
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魔界村は上記に加えて、複数の武器とボスを追加した。
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ロックマンは上記に加えて、世界観に合わせたステージ選択、武器を追加した。
よいゲームとは?
それはプレイヤーの願望を叶えてくれるゲーム。現実世界ではなかなかあり得ないようなチャンスを、ゲーム内では与えてくれます。
ターゲットは誰?
・プレイヤーは何歳?(重要)
・ヘビーゲーマー?それとも時間のないカジュアルゲーマー?
重要なことがひとつ。「子供向けゲーム」はたいてい「子供向け過ぎる」傾向があります。
子供は自分の年齢層より少しだけ上のゲームをプレイしたいものです。そして、大人が考えるよりも子供は賢い。
面白いって、なんだ?
最初は面白かったゲームでも100回目、1000回目ともなると「面白くなくなる」なんていうのは人間なら当たり前の「飽き」です。面白い・面白くないは主観が多く、客観性がほとんどありません。
じゃあ逆のアプローチで「おもしろくない理論」はどうでしょう?
ゲーム開発中に何度か立ち止まり、「おもしろくないポイント」を見つけては排除するのです。
「おもしろくない」を取り除いたゲームは、次のどちらかになるはずです!
1.面白いゲーム
2.何も残らない
※わたしも「やりたいこと探し」より「やりたくないこと探し」のほうが得意です!
いい人ぶるな。アイデアの抹殺をためらうな
悪い要素は消したほうがゲームのためです。冷徹な人になりましょう!
パッケージから作ってみる
商品説明や、商品パッケージ、ユーザーズマニュアルから作ってみると、ゲームがイメージしやすい。困ったときにおすすめ。
※マーケティングの世界でも、LP(ランディングページ)を作ってから商品開発を進めることは、非常によくある手法だね!
おすすめスランプ脱出法
アイデアが出ない!よくあることです。対処例は次のとおり。
1.考えるべきことを絞る
問題を箇条書きにして、細分化して、1個あたり1分とかそれくらいで解決できるくらいにできるとよい。ただし、全体の問題を通して1日以内で解決できる分量が望ましい。
2.散歩
運動、気分転換は言わずもがな!
3.心配ごとを片付ける
部屋の片付け、ゴミ出し、雑務を終えて脳の容量を空ける!
4.好きなことからやる
情熱を注げる部分から注ぐ。ただしほとんどの時間制限がある仕事は、この方法を取るとスケジュールが崩れるリスクが大きい、かなり恐ろしい手段。
5.環境を変える
たまにはいつもの机を離れて仕事をしてみない?
アイデアは捨ててナンボ
宮本茂氏は、自分の奥さんにアイデアを話して、いい反応が得られなかったらアイデアを破棄するそうです。すげ〜。
第2章のまとめ
開発中にどんどん「おもしろくないアイデア」を取り除けば、おもしろいゲームになるはず。ゲームコンセプトが強固なら。
アイデアに執着したら負け。合わないアイデアは、どこか別ジャンルのゲームでの再利用を願って、捨てよう。
アイデアに価値はなく、アイデアの使い方に価値がある。
息詰まったら休憩していい。だけど先延ばしにしてはいけない。
第3章「ストーリー」
ストーリーを0から考える必要ナシ
ストーリーテリングは、神話の時代から語り継がれた王道があり、それをハリウッドの脚本家などがさんざん理論化してきました。その王道パターンに当てはめていくだけでいいのです。
無理やり当てはめる必要はない
「ストーリーのためのゲーム体験」も「ゲームのためのストーリー体験」も必要ありません。「このストーリーをどうしても見せたいから無理やりこのゲームシステムにした」なんてのは大抵の場合エゴです。逆も同じ。そして、ストーリーとゲーム体験のお互いが喧嘩しない道は必ずあります。
このうちの1つしか選べない
次のうち1つしか選び取れないとしたら、どれを選びますか?
1.キャラクター
2.行動
3.世界観
2つ選ぶと、ゲームが破綻し、ユーザーが離れるリスクが一気に高まります。
例:
オズの魔法使いは、奇抜で豊富なキャラクター以外は、至って典型的な行動と世界観です。
スターウォーズは、奇抜な世界観以外は、SFとしては典型的なキャラクターと行動です。
※キャラクター、行動、世界観(あと人間関係)は、お芝居の世界でもめちゃくちゃ言われましたね
プレイヤーを惹き付けるコツ
「ゲーム内キャラが知らないことを、プレイヤーにだけ知らせる」ことです。
例えば「キャラ同士が5分間会話し、その後爆発が起きる」というシーンがあるとします。プレイヤーからすれば「これはいったい何を見せられているんだ?」となります。
しかし、プレイヤーだけが見えて、キャラには見えない物陰に爆弾があったらどうでしょう?その爆弾が05分00秒にセットされていたら?「早く気づいてくれ」「逃げろ」「どうなるんだ」とプレイヤーをハラハラさせることができます。これなら5分後というクライマックスに向けて、どんな調理もできます。
ストーリーを放棄する手もある
開発の最後にストーリーをこしらえる、付け足すだけでも十分な場合があります。
※確かにブロックチェーンゲームに重厚なストーリーはあまり馴染みがないよね
やり方次第で「教育」ができる
教育といっても、何も学校教育をゲームで教え込むことではありません。
有名なストーリーの進行だったり、マインクラフトの建物の間取りを考える際に気をつけるポイントだったりと、「教養」といってもいいでしょう。
IP作品で気をつけること
ライセンス所有者:ライセンサー
ライセンス使用者:ライセンシー
- ライセンスについて深く調べる。
- 出ている作品はできる限り見る、読む、プレイする。
- 絶対に許されないことは何か確認する。
- 資料やドキュメントをできるだけ早く貰う
第4章「ドキュメント」
ドキュメントは料理レシピのようなものです。どんな材料を用意し、どういう工程で下ごしらえし、完成するのかを記します。そして実際の調理で味付けが足りないと思えば、現場で調整します。
ドキュメントには次の4分類があります。
- ワンシート
- テンページャー
- ビートチャート
- ゲームデザインドキュメント(GDD)
それぞれ見ていきます。
1.ワンシート
ゲーム全体を1ページにまとめた概要書です。チームメンバー、パブリッシャーなどほとんどのメンバーが読み手です。要点を面白く、短くまとめることがポイントです。
代表的な例として次の情報が載ります。
- ゲームタイトル
- ゲームシステム、ジャンル
- ターゲット年齢
- 想定レーティング
- ゲームプレイに関係するショートストーリー
- ゲームモード
- ユニークセールスポイント(USP)
- 競合タイトル
USPの例
- 256人協力プレイ!
- 1000曲以上を収録!
- オープンワールドと、200以上のマップ!
- 最新のゲームエンジンでリアルな物理演算と特殊効果!
- 追加コンテンツをDL可能!
2.テンページャー
テンページャーは、ゲームの全体像をざっくり説明したドキュメントです。
細かいこと抜きに、ゲームがどのようなものになるかひと目で理解してもらうことが目的です。これはゲームの出資者に見てもらう可能性が高いものです。
最後まで読みたいと思われるよう、絵をふんだんに使ったりします。
代表的な例として次の情報が載ります。
- ゲームロゴ、ゲームタイトル
- プラットフォーム、ジャンル
- ターゲット年齢
- 発売予定日
- 要約ストーリー(状況設定、葛藤、解決内容は必須)
- ゲームフロー(遭遇する困難と克服法、報酬、クリア条件など)
- キャラクター
- コンセプトアート
- ゲームプレイ(章分け、ラウンド制、USP、ハード制約など)
- 世界観(イラスト+文章)
- ゲーム体験(最初にプレイヤーが見るもの、音楽の雰囲気、それによって喚起される感情、明快なゲームメニュー画面など)
- メカニクス(仕組み、トラップ、パワーアップ品など)
- エコノミクス(通貨、売店、収集品など)
- 敵、ボス
- ムービーシーン
- ボーナス、アンロック要素
3.ビートチャート
ビートチャートは、ゲーム進行に関する全体像を提供します。
代表的な例として次の情報が載ります。
- ステージ(レベル)名、マップ名
- マップを指定するためのファイル名
- ゲーム内のタイムライン
- 各ステージで展開するストーリー
- 各ステージの特徴、重点部分
- 新たな敵、新たなボス、既存の敵について
- 新たなギミック、既存のギミックについて
- 新たなアビリティ、武器など
- 配置する宝と種類
- 配置するボーナス
- 使用する音楽トラック名
ビートチャートを作って分かることは、次のような内容です。
- 敵や宝の配置を、詰め込みすぎていないか?
- 進行がパターン化、単調化しすぎてないか?
- ゲーム内時間が単調化していないか?(原則、朝と夜は交互に)
- 音楽トラックは同じものが続いていないか?
- ゲーム内経済はアンバランス化していないか?
- ギミックやアイテムは攻略に必要な組み合わせか?
- プレイヤーが強化要素の全てを入手できるのはどのタイミングか?遅すぎないか?
4.ゲームデザインドキュメント(GDD)
GDDは、ゲームに必要なすべての要素をまとめあげ、開発中はチーム全員が参照し続ける、強固で完成されたドキュメントである必要があります。
しかし残酷な事実として、GDDが完成されるほど(長くなるほど)、誰も読みたくない膨大な文章量になります。目的は、一度決定した設定を忘れないためにあります。GDDに書いたことはうっかり忘れても構いません。また読み直せばいいのです。
GDDをWikiサイトに置き換えるのも結構ですが、得てして途中で各メンバーの更新が無くなり廃れがちであることを知っておきましょう。
第5章「キャラクター」
もっとも重要なことは「キャラの外見をゲームデザインに合わせること」です。
シルエットにしても判別できるくらいにしましょう。
- お笑い系
- ヒーロー系
- クールガイ など
キャラに個性をもたせる方法
- キャラメイクを導入する
- 名前を変更できるようにする
- 走るとなびくものを用意する(ポニーテール、マント、尻尾など)
- アイドル状態(停止中)の動作
NPCの役割
NPCは「プレイヤーが先に進むため」の存在です。この役割のないNPCは、配置すべきではありません。
役割の例
- プレイヤーの目標そのもの
- 次の目的地を指し示す
- 目標達成に対する報酬(お金や、名声)
- 敵を倒したり、身を守るための道具をくれる
- パズルや攻略のヒント
- バックストーリーの解説
- ゲームプレイの説明
- 主人公に対する現在の反応(敬意、恐怖など)
- ギャグやユーモアの提供
第6章「カメラ視点」
カメラはゲームの生命線です。カメラアングルが悪いとクソゲーになります。カメラには次のようなアングルがあります。
- 固定カメラ
- 視差スクロール
- 強制スクロール
- マルチプレーンカメラ(2D+奥行き)
- 2.5Dカメラ
- 一人称カメラ
- 三人称カメラ
- レールカメラ
- クォータービュー
- トップダウンカメラ
- 自由視点
- 神視点
マップの端っこ問題
三人称カメラなどでは、マップの端に行くと、カメラがオブジェクトにめり込んでしまい、正常な視点にならない場合があります。
一番いい方法は、カメラに特別な処理を加えるのではなく、プレイヤーを端っこに近づけさせないことです。フェンス、擁壁、ちょっとした岩などを配置するのです。
それがイヤなら、スパイダーマンがカメラを持って撮影しているように、壁に近づくにつれて視点が上がっていくようなカメラ視点を取り入れましょう。
第7章「操作方法」
※2012年以前の著書のため、PSコントローラやWiiリモコンの説明に重きをおいたものばかりだった。スマホゲーにはまったく言及されていなかったので、省略!
第8章「HUD(ヘッドアップディスプレイ)とアイコン」
HUDには次のようなものがあります。
- 体力ゲージ
- 照準
- 弾薬
- 所持アイテム
- スコア
- 経験値
- マップ、レーダー
- ポップアップ
アイコンについて
アイコンについて考えることは多岐にわたります。
- 適切な絵、色味、形
- 1アイコン=1要素
- 似たアイコンを作らない
- アイコンにカーソルを乗せるとポップアップするかどうか
- アイコンを押すと必ずフィードバックすること(色、SE)
- 重要なボタン、頻繁に使うボタンは大きく、近く、分かりやすく
どの画面からも、キャンセル3回以内でゲームに戻れること。
第9章「レベルデザイン」
ここで言うレベルとは日本に馴染みのある言葉では「ステージ、ワールド」のことを指します。スーパーマリオブラザーズで言う「ワールド1−1」たちのことです。ゲームによってはニュアンスこそ違えど「ラウンド、ウェーブ、アクト、チャプター、マップ」とも言います。
以下はよくあるレベルです。
- 宇宙
- 炎と氷
- 洞窟、遺跡
- 向上
- ジャングル
- 墓地、屋敷
- 海賊船
- 荒廃都市
- 宇宙船
- 下水道
これらを組み合わせても、意外で面白いものが生まれます。
レベルデザインはディズニーランドから学べ
ディズニーランドにはレベルデザインに必要なすべての要素が詰まっています。
ディズニーランド
ワールド→各ランド→アトラクション→各シーン
ゲーム
ワールド→レベル→体験→各ゲームプレイ
ディズニーランドは各ランドにそれぞれのアトラクションがあり、ゴミ箱1つに至るまでコンセプトが立っていて、それぞれにシーンがあります。ランド内はいつでも自由に行き来でき、どのランドからでも楽しむことができます。
マップは通路型?島型?
通路型のメリットは以下のとおりです。
- プレイヤーの導線を予想しやすい
- イベントポイントを設置しやすい
- プレイヤーに伝えたい情報などを正確に届けられる
- カメラ固定方法によっては、プレイヤーが迷わない
- ストーリーの行間を想像させやすい(イベントを見せる順番を固定できるため)
島型のメリットは以下のとおりです。
- 圧倒的自由度(遊び方、行ける場所に制約が少ない)
- 強い探索モチベーションを与える
- 乗り物(移動手段)の魅力が増す
- 開放感、規模感が大きい
通路型と島型のマップを交互に提供するゲームもあります。どちらにしても「ウィンナ(目印)」を建てたり、ガイドを表示したり、細目テストを繰り返すことで、プレイヤーがどこに向かえばいいか分かりやすくサポートしてあげることが可能です。
ウィンナ:ランドマーク。ゼルダで言う遠くに見える城、ディズニーランドで言うどこからでも見える中央のお城、といった具合です。
細目テスト:通路を作成する際、「細目でそのマップを見ても、進むべき道が分かるかどうか」テストする方法。つまり地面を明るくはっきりと照らすなど明示し、通路でないところは逆に目立たせないこと。進むべき道を、言葉ではなくデザインで解決する方法。
「歩くこと」は好ましいゲーム体験ではない
ただダラダラと歩かせるだけは、いいゲームプレイとは言えません。
次のような工夫でプレイヤーが退屈するのを防ぎ、小気味よいゲーム体験を提供しましょう。
- ジャンプ
- 敵の配置
- 収集要素
- よじ登り
- 泳ぎ
- 振り子
- 飛行
- 逃走
- 隠密
- 探索
- 分岐
※分岐で行き止まりを作る場合、どんなにささやかであっても報酬を配置するべきです(ただの飾りオブジェクトでもよい)
「後戻り」は悪い方法ではない
例えば「鍵のかかったドア」に直面させてから、後戻りし、鍵を探してもらう、というゲーム体験それ自体は理にかなった「後戻り」です。ただし何度も往復させるのは無しです。
行きは平坦な道だったが、帰りに溶岩が溜まる、水没する、というのも面白いデザインです。
ただし、もしも「長い」とか「退屈」と感じたなら、それは真実であると著書は強調しています。
大イベント→合間→小イベント→合間→大イベント
大イベントは連続させるべきではありません。緩急をつけてバランスよく配置しましょう。
例えば「ワンダと巨像」では、「巨人と戦う要素」だけでなく、そこに至るまでの、静かな旅を楽しめるようになっています。
プレイヤーが行けると思うなら、そこは行けるべき
プレイヤーが「行ける」と思って立ち入ったのに見えない壁に阻まれることは、不快なゲーム体験となります。
行かせたくない場所があるなら、低い壁を設けたり、木の茂みを配置するなどすることで「行けない」ことのルール性をもたせれば、プレイヤーはいずれ学びます。
第10章「バトル」
プレイヤーが快楽を得るのは、アクションを起こし、結果(フィードバック)が得られたときです(フロイトの快楽原則)
その典型例がバトルであり、つまり「攻撃する、結果が返ってくる、報酬を得る」の連続です。
攻撃マトリクス
バトルアクションの情報として、次のマトリクスを用いることができます。
- 攻撃名
- 操作方法
- 攻撃範囲
- 攻撃速度
- 攻撃方向
- ダメージ
- 特殊効果
ヒットモーション
攻撃の手応えは絶対に必要です。例えば次のとおりです。
- 気持ちいいヒット音
- ボイスリアクション
- スローモーション
- ヒットストップ
- 敵がのけぞる
- 吹き飛ぶ
- 火花
ゲームオーバー画面は時代遅れ?
アーケードゲーム(ゲーセン)の時代は、できるだけたくさん硬貨を消費させることがゲームの使命とも言えました。そのための簡単な方法が、ゲームオーバーさせ、コンティニューを要求することでした。この頃は死=ゲームオーバーでした。
そして家庭用ゲームに移ってからは、必ずしも必要な概念ではなくなります。
ゲームオーバーにはするけれど、すぐにチェックポイントに復帰できるようになり、死のペナルティも時代が進むにつれどんどん軽いものへ変わっていきます。
それはなぜか?「ゲームとは、プレイヤーを遊び続けさせるもの」だからです。途中で投げ出す可能性のあることは、徹底的に排除すべきです。
第11章「敵キャラ」
敵の機能は、最初にかならず定義する必要があります。
- サイズ
- 行動
- 速度
- 移動方法
- 攻撃方法
- 攻撃性(行動とは異なるパラメータ)
- 体力
これらが決まってから、ようやく敵キャラのデザインに移って下さい。
敵のパターン例
- パトローラー:予測可能な動きを繰り返す
- チェイサー:索敵範囲などに引っかかると追いかける
- シューター:プレイヤーを発見すると射撃する
- ガードマン:アイテムや扉を守ることを優先する
- フライヤー:空中を飛ぶパトローラー
- ボンバー:上空から爆弾を落とすなどする
- ブロウアー:特定の場所で突如出現する
- テレポーター:瞬間移動する
- ブロッカー:盾など防御手段を持つ
- ドッペルゲンガー:プレイヤーキャラ自身の写し身
これらの「シューターを後ろ、ブロッカーを前に配置する」などの組み合わせで、プレイヤーを脅威に晒します。
戦利品をもたせる
敵キャラを倒したご褒美は、「プレイヤーが欲しいと思うもの」にすべきです。
- お金、アイテム
- 行く手をはばむ
- 鍵を持っている
- 能力や武器を奪う
第12章「メカニクス」
用語の定義
ボードゲームにおけるメカニクスとは・・・「ゲームプレイのシステム」のこと。ターン、リソース管理、ダイスロールなど。
テレビゲームにおけるメカニクスとは・・・「インタラクト可能(影響の起きるもの)な物体」のこと。ドアの開閉、ブロック、スイッチ、レバー、ベルトコンベア、移動する浮遊物など。レバーを引くとトイレが流れるのもインタラクトの一種。
ハザード
ハザードは次のようなものを指します。すべてプレイヤーの脅威となり、乗り越えることでプレイ体験を豊かにするものです。
- トゲトゲ床
- 定期的な落石
- 定期的に吹き上がる炎
- タレット、銃付きの監視カメラ
これらを「タイミングを見計らって切り抜ける」のはゲームの醍醐味でもあります。
プレイヤーの権利を奪うな
パズルギミックでも何でも言えることですが、「ゲームを進める」ことはプレイヤーの権利です。
「パズルが解けないからゲームが詰む」はあってはならず、救済措置を用意しておくべきです。ヒントを読むと報酬が少し減るとか、その程度のペナルティに留めることを検討しましょう。
第13章「パワーアップ」
パワーアップは、次の4つにカテゴリできます。
1.防御
- HP増加
- MP補充
- 残機増加
- 不死身
- 無敵(不死身+敵を弾く)
- バリア
- 間接攻撃(煙幕など)
- ボム(状況の一掃)
2.攻撃
- 弾薬補充
- 強化
- 範囲拡大(3way攻撃など)
- 武器強化/交換
- 属性付与
- 仲間
3.移動
- スピード変更
- アクセス手段増加(船、飛空艇など)
- サイズ変更(巨大化、ちび化など)
4.ゲームチェンジャー
- スコア/報酬増加
- 状態変更(逃げるだけのパックマンが敵を襲えるようになる)
- マグネット(自動収集)
- 透明/変装
欲望を利用する
プレイヤーの欲望はうまく活用しましょう。次のような例です。
- お宝、アイテムをちらつかせる
- トロフィー棚がどんどん埋まるようにする
- 他の人がいい装備を持っているのを見せつける
- 「柱の下には宝が眠っている」など、独自の指標を作る
- 誘導したい道にコインやバナナを並べる
報酬を利用する
報酬も、欲望と同じくらい重要なものです。次の点に気をつけます。
- 報酬はできるだけ早い段階で予告してあげる
- 獲得できるものリストを提示してあげる
- 報酬は早めに、そして頻繁に与える
- 与えるときは華やかにお祝いする
- バラエティ豊かな報酬を用意する
- サプライズ報酬も用意する
- 意味のある報酬にする
次のプレイに役立つもので、しかもプレイヤーが入手するまで必要だと気づかなかったものであれば最高です。
報酬の種類
- スコア、実績、リーダーボード、宝物、戦利品、パワーアップ、記念品、ボーナス、称賛、サプライズ、ゲームが進行するもの
第14章「マルチプレイ」
通信の種類
- 直接対決:いわゆる2P〜4Pコントローラ使うやつ
- ネットワーク、P2P:LAN接続やブルートゥース接続のようなやつ
- クライアントサーバ:MMOとかで使うやつ
マルチの種類
- バトルロイヤル
- チームバトルロイヤル
- 格闘対戦
- サバイバル
- 占領戦
- 防衛戦
- 旗取り
- レース
- チームゴール
- 人間VS神
- ギャンブル
- 反射神経
- クイズ
- 創造、クラフト
- メタバース
第15章「サウンド」
ライセンスか、オリジナルか?
ライセンス音楽を買う場合は、ワンタイムバイアウトフィーと言って一度限りの契約を行います。相場は1曲2500ドル〜3万ドル以上だそうです。
サウンドディレクターと話すにあたって覚えておきたい用語は次のとおり。
- アクセント、ビート、コード、楽器、ムード、ピッチ、オクターブ、リズム、店舗、テーマ、トーン、アップビート、ボリューム
ダイナミックスコア
テーマに沿ったBGMをそれぞれ用意することもできます。戦闘BGMとダンジョン探索BGMなどをシームレスに切り替えられるといいでしょう。
用意すべきジャンル例は次の通りです。
- ミステリー
- 警告
- バトル
- 追跡
- 勝利
- 歩き(通常時)
- 環境音
SE
サウンドエフェクト(SE)例です。
- 移動:砂利、金属、水しぶき、着地など、世界との関わりが感じられる重要な部分
- 攻撃:素振り、踏みつけなど
- 命中:ヒット音、爆発など
- 武器:銃撃、剣撃、レーザーなど
- ダメージリアクション:うめき声、漏れる声など
- ボイス:アイテム取得時などに発する声
- 死亡:うめき声、絶叫など
- 成功:ファンファーレ、歓声など
SE素材はSound Ideas、Hollywood EdgeなどのCDライブラリがあるほか、Sound Forge、Vegasといった編集ツールもあります。
音の距離
- 近距離音:小川のせせらぎ、時計など、遠ざかると消えるもの
- 遠距離音:爆発、遠吠えなど、遠くても聞こえるもの
- 優先音:アイテム取得など、プレイヤーがどこにいても聞こえるべきもの
第16章「ムービー」
ムービーシーンは多くのゲームで使われていますが、批判も多い手法です(特に飛ばせないムービー!)
そのため、常に「ムービーでなく、ゲームプレイ中に表現できないか?」を自問自答しましょう。
脚本を書く8ステップ
1.話の概要をまとめる。状況設定、葛藤、解決法。
2.話をシーンに落とし込む。各シーンの場所と登場キャラを決める。アクションシーンから始めることが望ましい。
3.どのシーンをムービーにし、どのシーンをプレイ可能にするか決める。大爆発など、プレイで表現できないことだけをムービーに譲る。
4.シーン内容と会話を書く。言葉でなくアクションで伝えることが基本。短い言葉で伝わるほど、よい脚本。
5.伝統的な映画脚本フォーマットに従って脚本を書く。
シーン番号・室内/屋外・場所・時間・カメラアングル
舞台設定・キャラクター・アクション
キャラクターの名前+ディレクション
会話内容
6.会話を大きく読み上げてみる。おかしかったら修正する。
7.内容を数日寝かして見直したり、人に読んでもらう。
8.声優の台本を作りキャスティングする(ボイスディレクターを頼るのもあり)
第17章「ピッチデック」
すばらしいアイデアを持っていても、数百ページのゲームデザインドキュメントを書いても、パブリッシャーを見つけるために必要不可欠なものがあります。それがピッチです。
ゲームデザインドキュメントから要点を抜き出し、理解しやすい形にまとめたものを作ります。
ゲームの素晴らしい点、オリジナリティをたくさん含めるいっぽう、伝える必要のない部分を削ぎ落とす作業が必要です。
- ロゴ、タイトル画面
- 開発チーム
- ハイレベルコンセプト
- ゲーム詳細(数ページ以内)
- このゲームの発売によって多くの利益をもたらすことを証明する情報
プレゼンの注意点
ピッチデックを持ち込んでプレゼンをする際に気をつけたいことです。
- 小難しいストーリーを話さない。もしくは、ストーリーについて一切触れない。
- 適切な相手へプレゼンする。
- プレゼン環境を整える(E3展示会場にプレゼン先がいるなら、その中の会議室を借りる)
- 万全の準備をする。練習を繰り返す。
- プロジェクトの全貌を把握しておく。
- プレゼン目標は最高の一点に絞る。
- 説得力の順は【ゲームデモ>GDD>プレゼン>ピッチデック】
- アイコンタクトをする、熱意、笑顔、服装、名刺、補足資料、実機デモ、PC、ビデオ、資料コピー
開発に必要な備え
ゲームを作っているのは人間です。そのため、次のようなことに気をつける必要があります。
- 計画性を持つ。病欠の可能性をスケジュールに加味する
- ハードウェア障害や技術的問題も加味する
- キャパを超えるアイデアを入れない
- できるだけ早くデザインとゲーム内容を固める
- プレイヤーは予想外の行動をするものと心得る
- 「デザイナーの錯覚」をできるだけ取り除く(テストプレイなどしすぎて一般感覚とずれること)
- うまくいってないアイデアは思い切って捨てる(S.I.F.S=save it for the sequel=続編にとっとこう)
最後に
著者は本編の最後に、こう締めくくります(意訳)。
- 適度に休憩しましょう。一番大切なものは命と健康です。
- いつでも公平で、寛大であれ。あなたのした発言はすぐ人に伝わります。
- ゲームの良し悪しに関わらず、常にゲームをプレイし続けてください。
- ゲーム開発で成功するひとは僅かです。だからこそ、すべての瞬間を楽しんでください。